伝説の艦(ふね)
作者: 戦舟   2011年01月26日(水) 11時15分26秒公開   ID:T2SlLVuuolI
アルカディア号の艦橋で、キャプテンハーロックはビデオパネルを凝視していた。ワープアウトしてきた艦、あれは・・・。昔、トチローと貪るように読んだ古い資料に記述があった伝説の艦。あれに似ている気がする。しかしまさか・・・。
ふと気が付くと、敵艦隊の行動にも動揺が現れている。どちらを攻撃目標にするか迷っている様子だ。やつらにとってもあの艦は予想外という事ならば、少なくとも当面の敵ではない。
「副長、敵は混乱している。この機に乗じて徹底的に叩くのだ!」
「了解!いてもうたれ!!パルサーカノン、連続斉射!!」
距離が詰まっている為、主砲の威力は倍加されて敵艦を打ちのめした。後続するクイーンエメラルダス号はアルカディア号の後部上方に位置取り、スペースウルフ隊が阻止しきれなかった敵機に対して対空戦闘を展開している。おかけでアルカディア号は敵戦艦との戦闘に専念する事が出来た。
「敵4番艦、沈黙しました。速度低下して戦線離脱して行きます。5,6番艦は撤退を始めました。」
螢が報告する。どうやら戦艦部隊の指令艦を撃破したらしい。
「逃げる奴は放っておけ。螢、例のワープアウトしてきた艦はどうした?」
「はい。敵の狙撃戦艦はどうやらあの艦を目標に変更したようです。集中砲撃をうけています。・・・キャプテン!!あの艦が進路を変更して急加速しました!すごい加速性能です、おそらく本艦でも追い付けない!」
その瞬間、アルカディア号の心となった我が友の心臓の鼓動を感じた。大きく波打っている。奴は興奮しているのだな。それは俺も同じだ。
「進路は?どっちに向かっている?」
「敵の狙撃戦艦部隊に向かっています。速度、40宇宙ノットを越えます!狙撃戦艦部隊の砲撃は、急激な機動に追従できていないようです。・・・!キャプテン、あの艦からは、タキオン粒子の反応があります。!!」
ヤッタランが弾かれたように立ち上がって叫ぶ。
「なんやて?タキオンって、あんた、それがほんまやったら…!?」
ハーロックはヤッタラン副長の言葉の後を、ゆっくりと追って継いだ。
「そうだ。機械化人間どもによって闇に葬られた失われた超技術、イスカンダル・テクノロジー!幻の超高出力機関、波動エンジンだ!」
アルカディア号の艦橋は水を打ったように静まり返った。その静寂を破るように、螢の報告が大声で響く。
「敵味方不明艦、砲撃を開始しました。狙撃戦艦部隊までの距離、60宇宙キロ近くはありますが・・・。!敵先頭艦の反応が消失しました!!」
「あの距離から砲撃して、初弾で命中、しかも一撃でやってしまいよった!なんちゅう射程、なんちゅう威力や!!いったいあの戦艦は?」
ヤッタランが唸る。そして、彼方の宇宙空間で続けて何度か光が煌いた。その度に狙撃戦艦のレーダー反応が一隻づつ消失していく。あの戦艦の重装甲がまったく通用していない、恐ろしい威力の攻撃だ。こんな一方的な戦闘になろうとは、誰が予想し得ただろう?アルカディア号の乗組員は驚愕の眼差しでその様子を黙って見つめていた。あの艦はいったい何者なんだ?

ハーロックは暫く沈黙していた。彼は思った。そう、惑星ヘビーメルダーは時間と空間が交錯する所。こんな出来事も、宇宙の神の采配ならば起こりうる事なのかもしれない。そして、搾り出すように言った。

「あれは“ヤマト”だ。かって宇宙大航海時代の幕を開け、母なる地球を無法な侵略者から守り抜いた偉大な戦艦だ。」
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