Yamato Only Novel Deck(ver3.0)


『How to "OSECHI"』

 >>>ひらめ   -- 03/01/01-20:43..No.[21]  
    生活班炊事科キャップ幕之内勉(28)は、一通の要望書を前に悩んでいた。
『─ 正月に、おせち料理を作ってくれたまえ。 ばーい沖田★ ─』
これである。
2199年、宇宙時代真っ盛りなこのご時世に、なんたる注文をつけるのか。今時おせちのレシピなぞ、幕之内の知るところではない。
「おせち……か」
確か、『食べてびっくり!古の料理2198』にそんな料理があった気がする。だが、それもガミラスの遊星爆弾攻撃による放射線がどーたらこーたらと、捨てられてしまったはずだ。幕之内は頭を抱えた。こうなっては、ナイスなグラサン・ボーイもお手上げである。
「いっそ、艦長に伺ってみようか……?」
この料理をオーダーしてきた沖田本人ならば、どのような料理かわかるはずだ。しかし幕之内は首を横に振る。そんなことを言えば、沖田に「おせちも知らないとは、今時の若者は(以下略)」とかる〜く2時間の説教をされてしまう。嗚呼、困った困った。
そこへ同期の真田がやってきた。
「お?どうした、青い顔をして」
幕之内は悩みを打ち明ける。
「おせちか。何か、その本の内容を思い出せないのか?」
「う〜ん。そうだ!たしか、クロマメ・クリキントンと書かれていたぞ!」
すると、いいタイミングでブラックタイガーの連中がやってきた。
「ああ、腹が減った!今日の昼飯はなんだろな〜♪」
フンフンフ〜ンと鼻歌も調子よく、加藤たちが幕之内の前に集まる。
「幕之内さん、昼飯は……あれ?どうしたんすか、そんな顔して。技師長まで!」
二人は訳を話す。
「おせちですか。聞いたことがありますよ。うちのじーちゃん、2120年生まれで、時々昔話なんか聞かせてくれましたからねぇ。えーっと、確か」
「まてまて!紙に書いておくから」
言って幕之内はメモを用意する。
「よし、いいぞ」
加藤は腕を組んで宙を見上げる。
「では、カズノコ・ダテマキ・イセエビ・コブマキ・カマボコ・クリキントン・オツクリ……あと思い出せるのは、お雑煮くらいですかねぇ」
「なんだ、そのお雑煮ってのは」
「俺ではなんとも……山本、知ってるか?」
話題を振られた山本も考え込む。
「確か、モチってのが入っているはずだけど」
そこへ古代の艦内放送が入り、ブラックタイガーのメンバーは大急ぎで立ち去ってしまった。
残された二人は考える。
「カズノコってのは何だろうなぁ」
幕之内が言うと、
「“数あるノコギリ”じゃないのか」
真田が言った。
「ノコギリ?食べ物じゃないじゃないか」
「いいんだよ、なんといっても艦長がオーダーされたんだろう?普通の食べ物であるはずがない。それに古代の人の食べ物だ、きっと鉄分を重視してノコギリを調理したんだろう」
「じゃあ“ダテマキ”」
「そいつはきっと“伊達男・巻き巻き”の略だな」
「伊達男!?」
「南部あたりを海苔で巻いたらいいんじゃないか?」
幕之内は汗をかく。
「そ、そうか……まぁいい。次は“イセエビ”」
「“威勢のいいブラックタイガー隊”?」
果たして過去にブラックタイガー隊が存在したのだろうか、と考えつつも幕之内はメモを取る。
「“コブマキ”」
「“昆布つきの薪”」
そんな調子で、一通りメモを取り終えた幕之内。
多忙な真田は、「じゃあがんばれよ」と一言言って去っていってしまった。
残りの品については以下の通り。

カマボコ:釜で炊いたぼーっとしたコンピューター
クリキントン:いつかの米国大統領ブロマイド
オツクリ:「ohッ!クリキントン」と一言言う
クロマメ:黒ずんだ豆男(=古代か?)
モチ:モジュレーティングバルブ(ティ=チ?)

……。
い、いいんだ。きっとこれでいいんだ!!
幕之内はそう自分に言い聞かせ、完成品をそっとトレーにのせた。

後日、幕之内キャップのガミラス星前線送りとの噂が、まことしやかにささやかれたという。





いいです。きっとそれでいいです(^^)

>>> ぴよ   -- 03/01/03-18:55..No.[22]
 
    いやはや、笑わせていただきました。し、しかし、黒ずんだ豆男とは…(爆)。
実際問題、2199年だとこうなっている可能性大ですね。…実はことし、手抜きをしてデパート製3段おせちを買ってごまかしたんですが、元旦の朝ご飯だけで既に全員がもてあます始末。…「冷たい」「甘辛ーい砂糖醤油味のオンパレード」というところがネックでしょうか。来年はカズノコと田作りと黒豆だけ少量買ってお茶をにごすかもしれません。
それはさておき、トレーを出された時の沖田艦長の反応を見てみたかったですね〜。
 
幕の内^^その2

>>> 長田亀吉   -- 03/01/06-22:09..No.[26]
 
    こちらではさらに本格的に活躍ですね。
現実にはああいう人が活躍するし大事だと思うんですよね。
キャラクターへの愛情がひしひしと感じられて読んでて楽しかったです。ありがとうございます。DRAWの方も。
 
絵で見たい光景です

>>> Alice   -- 03/01/07-01:12..No.[29]
 
    幕の内キャップって、結構ひょうきんだったんですね。威勢のいいブラックタイガーって、どんな味がするんだろう…。(それ以前にトレイに乗るんだろうか)
 


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