Yamato Only Novel Deck(ver3.0)


『は〜やく来い来い、お正月♪』

 >>>Alice   -- 02/12/31-01:28..No.[19]  
    2199年12月、宇宙戦艦ヤマトは銀河の大難所、オクトパス星団で足留めをくっていた。嵐が収まれば海峡が必ず見つかると航海長は主張するが、ただでさえ60日も遅れを出している所に3週間もの立ち往生、艦内のイライラは最高潮に達していた。

「餅つきだと?」
「こんな状態を放っておくと、艦内にもう1つの危険を抱え込んでしまいます。お正月も近いことですし、艦内の空気を和らげるためにも、是非許可していただきたいんです。」
「だめだ。」
「ダメ?」
「同じ理由で、5日前にクリスマスパーティ、一昨日には忘年会をやったばかりだろう。食料事情も厳しいことだし、そうイベントばかりやるわけにはいかん。」
「でも、艦長。みんなストレスがたまっているんです。古代君と島君だって、喧嘩ばかりして…。」
「森、自己のストレス管理も戦艦乗りの仕事だ。生活班も、イベント企画じゃなく、食料節約計画でも練りたまえ。」
「はい。」

艦長室を辞去したユキは、不満顔だった。
(だって、な〜んにもする事がないんだもの、餅つきぐらいしたっていいじゃない。お餅は腹持ちがいいし、食材だってもち米と塩、味付け用のアンコやきな粉に砂糖醤油と海苔くらいですむのに…。艦長のケチ!)

ぶつぶつ言いながら展望室の前を通りかかると、この足留めの張本人が窓から外を眺めていた。
(古代君じゃないけど、海峡があるっていう島君の“カン”、当たってるのかしら。宇宙航海時代にカンだなんて、非科学的もいいところだわ。ちょっと一言、言ってやろう。)

「島君。寝ないの?」
「う…ん、眠れないんだ。海峡は本当にあるんだろうか。」
「なんですって?海峡があるって言ったのは、島君じゃない。」
「それは、そうだけど…。」
「もし自信がないんだったら、一刻も早く、暗黒星雲を迂回していくべきじゃない?」
「いや、それは…、海峡はある。必ず、必ずこの近くにあるさ。」
「よけいなこと言っちゃって、ごめんなさいね。おやすみ。」

(ふ〜ん、そこまで言うなら、お手並み拝見させていただくわ。)

ところが、それから間もなく、星雲の嵐が晴れ、古代は艦長命令で海峡調査に出た。大きな口を叩いた割には不十分な調査結果で、島は困惑顔であったが、沖田は星雲突破を命令する。
「島、かまわん。慎重さは必要だが、100%を待っていては行動はできん。ここは決断しよう。総員配置につけぇ!」
クルーがそれぞれの持ち場へ走る中、沖田はユキを呼び止めた。
「森。」
「はい。」
「餅つきを許可する。」
「え〜っ?」
「海峡突破に成功したら、正月だ。用意しておけ。」
「はい!」

あわてながらも、自然と顔がほころんでくる。
(大変、大変。忙しくなったわ。艦長も許可するつもりがあるのなら、早めに言ってくれればいいのに。海峡突破と同時にすぐ正月だなんて、急がなくっちゃ。)

それからのユキの行動は実に迅速だった。生活班を総動員して、大ホールに餅つき会場をしつらえ、厨房をフル回転してもち米を蒸した。それから、手の空いているクルー全員に召集をかける。第一艦橋メンバーと航海班及び機関部は多忙だったが、戦闘班、ブラックタイガー隊、工作班、そして通信班は手持ち無沙汰だったので、ホールにドヤドヤと集まってきた。

「皆さん。」
ユキがハンドマイク片手に呼びかける。
「暗黒星団の嵐が晴れて、海峡が発見されました。ヤマトは間もなく海峡に突入し、一気に星雲を突っ切ります。そして、向こう側に出たら、お正月です。艦長の許可もいただきましたので、これから餅つき大会を始めます。」
ホールには、それぞれの班ごとに色分けされたカラフルな臼と杵が用意されていた。
「いったいいつの間に、こんな物、積み込んだんだ?」…と質問される間を置かず、ユキがニッコリ笑って宣言する。
「自分の班のお餅は、自分でついてもらいます。食料事情が厳しいので、働かざる者食うべからずですよ。美味しいお雑煮が食べたかったら、がんばってくださいね。」

生活班員が、それぞれの臼に蒸したてのもち米を入れていく。臼から、ホワホワと湯気が上がった。ブラックタイガー隊は黒と黄色の縞模様の臼の周りに集まる。
「よし、それじゃ、まず隊長の俺がつくから、山本、お前が手返しだ。」
「え?て、手返しって…」
「俺がついたら、間髪入れずに、濡らした手で餅をひっくり返すんだよ。」
「う、うむ…」
「副長。手返しをする時は、これをつけないと!」
隊員の1人が、日本手ぬぐいで山本の頭に姉さん被りをさせる。
「なんだよ、これ!」
「日本古来の餅つきスタイルじゃないですか。知らないんですか?」
「よし、それじゃ、行くぞ、山本!ようぉいしょおーーー!」
加藤が勢いよく杵を振り下ろすと、ベタン!と間抜けな音がした。山本がすかさず手を入れて、臼の中身を底から返す。
「熱っちぃ!」
ベタン! あっちぃ! ベタン! あっちぃ! ベタン! あっちぃ!

ブルーの臼を取り囲んだ工作班は、静かに腕組みをして湯気を上げるもち米を見下ろしていた。
「僕らは、非力な工作班だからなぁ…。腕力に訴えるような方法じゃ、全員分の餅はつけないよ。」と実はPart1から乗艦していた新米。
「でも、ちゃんとつかないと、後で技師長に大目玉を食らいますよ。」
「そうそう、結構、食べ物にはうるさいんだよな、技師長って。」
「わかった。それじゃ、僕らは頭を使おう。10分以内に、この臼と杵を自動餅つき装置に改造するんだ。」
「おーーーっ!」
ブルーの軍団は全員が携帯端末を取り出し、設計に取り掛かった。

赤い臼の周りには、体力自慢の戦闘班が集まった。
「ただつくだけじゃ芸がない。俺たち、戦闘班はタイムを競おうぜ!」
「よっしゃあ!」
手返しを入れる暇もあらばこそ、戦闘班員は力任せに餅をつきまくるが、スピードアップに血道を上げて、命中率が恐ろしく低かった。
「何やってんだよ!それでも砲術士か、お前たち!」
第一艦橋勤務にも関わらず、出番がないので餅つきに参加していた南部が皆を押しのけた。
「狙いは正確に。誤差もきちんと修正しろ。ターゲットスコープ、オープン。電影クロスゲージ、明度20。対ショック対飛散防御、今だ、撃てーーーーっ!(あー、一度でいいから言ってみたい、このセリフ)」
杵は臼のど真ん中にヒット。班員から歓声が上がる。

通信班員は、黄色の臼の周りでのんびりしていた。
「どうせ僕らは人数も少ないし、班長同様、線が細くて食も細いから、餅もちょっぴりでいいよなぁ。」
「うん。うん。」
「じゃ、筋肉痛になったら困るから、順番に1人1回づつね。」
「うん。うん。」
「よいしょ!」
ぺったん!
「はい、交代。よいしょ!」
ぺったん!
「はい、次。よいしょぉ!」
ぺったん!
「次の人、どうぞ。」
黄色い臼の中のもち米は、いつまでたってももち米のままだった。

「班長。生活班も班の分をつきましょう。」
「いいのよ。幕の内さん。私たちは、他の班がついたお餅の20%をもらうから。」
「つ、つまり、上前をはねるっていうか、上納させるんですね?」
「あら、そんな、人聞きの悪い。表向きは、食中毒検査のための、検食用よ。ほほほ…」
「………」


いがみ合っていた古代と島が第一艦橋で手に手を取ってヤマトを操縦している頃、ホールの餅つき大会も佳境を迎えていた。嵐が収まったとはいえ、激しい気流にもまれて大揺れの艦内で足を踏ん張り、よいしょ!ぺったん!よいしょ!ぺったん!新しい年への希望を込めて、威勢のいい掛け声が響き渡る。

そして星雲突破と同時に、ヤマトは新年を迎えた。

Happy New Year!



よいお年を。

>>> ゴーシ   -- 02/12/31-10:17..No.[20]
 
    山本って餅つきを知らないんだ(笑)200年未来の日本人だし、しょうがないかな。
ユキの煽りの上手さがいいですね。アナライザーがいないのがちょっと残念かも。

では、私からもHappy New Year!
 
幕の内^^

>>> 長田亀吉   -- 03/01/06-22:07..No.[25]
 
    いい感じですね。
それとAliceさんからいただいたNY編ですが、ちと亡妻との思い出がまだ消化できないので勝手ながら削除させていただきました。見ると辛くなるので・・・。決して内容に問題があったわけではありませんので誤解無きよう。
Aliceさんには、平素より艦を支えていただいており、感謝以外の気持ちはありません。今後ともよろしくお願い申し上げます。
 


>>> Alice   -- 03/01/07-01:15..No.[30]
 
    >艦長
NY話の件は、どうかお気になさらずに。私も削除したいな〜と思いつつ、艦長の絵をつけていただいていたので、躊躇していました。
 


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