Yamato Only Novel Deck(ver3.0)


『合言葉はポニョ』

 >>>Alice   -- 08/09/25-20:33..No.[128]  
    「艦内に不穏な動きがあるだって?」
「そうなんですよ、古代さん。夜中に談話室や展望室に集まって、コソコソ密談している姿が複数回目撃されています。」情報通の相原が言う。
「一体どんなメンバーなんだ?」と真田。
「それが不思議な顔ぶれで…。●●に××、△△や◎◎、それにコック長と幕の内さんと徳川機関長、それから藪と太田も。」
「なにっ?第一艦橋のメンバーもか?」
「もしクーデターや脱走の計画ならマズイですよ。」
「まさか…」と否定しながらも内心穏やかではない島。もし腹心の部下である太田がクーデターなんぞに関わっていたら、上官として自分の責任が問われようというものだ。
「よし。偵察機を出して、集会の目的を探らせよう。」古代はパチンと指を鳴らして偵察機を呼んだ。

「偵察機1号、戻りました。」
「ご苦労だったな、加藤。何か分ったか?」
「いえ、それが、技師長特製の変装グッズがすぐ見破られてしまって、盗聴するには至りませんでした。すみません。」
「何?全身に葉っぱをまとい鉢植えに擬態して奴らに近づく作戦は失敗か!」
「真田さん、それはいくらなんでも無茶ですって。」
「心配するな、古代。こんなこともあろうかと、偵察機2号には集音マイクを持たせてある。」
「え゛〜〜〜っ!そんないい物があるなら、最初から出して下さいよ〜。あ、でも一つだけ収穫が。メンバーには佐渡先生もいます。」

「偵察機2号、戻りました。」
「ご苦労だったな、山本。何か分ったか?」
「いえ、それが、技師長特製の集音マイクがあまりにも目立ちすぎて、一瞬しか使えませんでした。すみません。」
「何?こうもり傘をオチョコにして音声を拾う作戦は失敗か!」
「真田さん、艦内で傘なんて持ってたら、それだけで怪しまれますって。」
「あ、でも僕も一つ収穫が。『合言葉はポニョ』だそうです。」
「「「「ポニョ?なんだそりゃ?」」」」
「分かりませんが、テーマソングもあるみたいです。」
「「「「クーデターのテーマソング?」」」」
「ええ。ぽ〜にょ、ぽにょ、ぽにょ…って♪」

不審な集会のメンバーと合言葉とテーマソングは判明した。しかし謎は解明されるどころか深まるばかり。ヤマトでは勤務後にどこで何をしようが基本的に個人の自由なので、ただ怪しいというだけでは、一方的に集会を禁止するわけにもいかない。どうしたものか…と思いあぐねているうちに、事態は思いもしない展開をみせ、いきなり切迫した。

「大変です!艦長代理!」
「どうした、相原?」
「例の集団にユキさんが拉致されました。」
「なんだって!場所は?」
「トレーニングルームに立て篭もっているようです。」
「奴らの要求は?」
「分かりません。」
「とにかく行ってみよう、古代。」真田に促されて走り出す一同。

息せき切ってトレーニングルームに駆けつけると、折しも沖田が中に入っていくところだった。
「どうして艦長が…」
「艦長も仲間なのか!」
「いや、艦長に直接交渉を持ちかけてのかもしれんぞ。」
「くっそ〜〜!なんて段取りがいいんだ。相当切れる作戦参謀がいるに違いない。こっちにスカウトしたいぐらいだ。」古代の頭から湯気が上る。
「どうする、古代?突入するか?」
「人質の安全を考えると、強行突入は避けたほうが…」
「くっそ〜〜!どうして人質がよりによってユキなんだ。屈強な戦闘員ならまだしも、ユキが人質じゃ手が出せない。」
「屈強な戦闘員だったら人質にはとれないかも…」と一応は戦闘員だが優男の南部がぽつり。
「しかし下手に長引かせて膠着状態に陥ると厄介だぞ、古代。」
「…そうですね。分かりました。真田さんがそこまで言うなら、突入しましょう。」とさりげなく責任転嫁しつつきっぱりと決断する艦長代理であった。
「えっ?おい、ちょっと待て、古代。こだ〜〜い!」

止める暇もあらばこそ、コスモガンを抜きざま、トレーニングルームに頭から飛び込んで華麗に一回転、腹ばいになってピタリと照準をあわせる古代。さすがに見せ場は心得ている。
「無駄な抵抗はやめろ!全員、手を挙げるんだ。」

「はい?」
一斉に振り向いたトレーニングルームの面々は、古代に命令されるまでもなく、すでにバンザイの姿勢だった。いきなり銃を突き付けられた●●に××、△△や◎◎、コック長と幕の内と徳川機関長、それから藪と太田と沖田艦長、プラス若干名が、カラフルなレスリングのユニフォームみたいなウェアを着て手を挙げたまま固まってしまった。ウェア自体はおしゃれなのだが、あちこちから肉がはみだしているため、お世辞にも似合っているとは言えない。
「こ、これは、一体…」
後からなだれ込んだ真田以下数名は、異様な光景に唖然として立ちすくむ。

「どうしたの?古代君たちも混ざりたいの?」
鮮やかなレモンイエローのレオタードを着たユキが集団の中から現れた。超ハイレグで肩もヘソも背中も丸出しで、目のやり場にとっても困る。
「ユキ、ここで何を…」
「あっ、古代君、大変。鼻血、鼻血!」

古代の思考が狂喜乱舞…、いやもとい、乱高下して逆回転、真っ白と化す。
『もしかして、まさかとは思うが、これはラ●コウ?ヤマト艦内で?艦長も一緒に?それとも新興宗教?で、教祖はユキってか?クーデターじゃないのか???????』

「キャーーーッ、古代君!」
ユキの悲鳴をBGMに、白目をむいて後ろにひっくり返る古代進であった。


************************

「いやあね、クーデターだなんて。みんなでエアロビクスしてただけよ。」倒れてしまった古代を扇ぎながら、ユキがコロコロと笑う。
「実は脱メタボの会なんじゃ。」徳川が頭をかきかき告白した。
「脱メタボ、ですか?」
「いや~面目ない。狭い機関室に籠っておるとつい運動不足になってな。このとおり、立派なメタボじゃわい。」太鼓腹をポンと叩く。
「太田、お前、また太ったのか?」
「はい。恥ずかしながら…」島に詰め寄られて、首をすくめる太田。
「しかし、艦長まで…。激しい運動は宇宙放射線病に障るでしょう?」
「あら、肥満は万病の元。内臓脂肪がたっぷりついていたら、治るものも治らないわ。」チッチッチ…と指を立ててユキが反論する。
「生活班長にダイエットを厳命されたんだが、なかなか一人だと続かなくてな。」
いつもは堂々としている艦長の恥ずかしそうな素振りが、なんだか新鮮でかわいい。
「それにこれは軍の広報活動の一環でもあるの。エネルギー不足の地球は当然食料も足りなくて、地球の人たちはギリギリの食生活を強いられているはずよ。そこに帰還するヤマトの乗組員がメタボだらけじゃ、市民感情を逆なでしちゃって、まずいでしょ?」

「なるほど、ダイエットが必要なのはわかったよ。でも合言葉はポニョというのは…?」
「それはね、皆さん、お腹も二の腕もポニョポニョしてるから、なんとなくノリで。ポニョの会って名付けて、戦闘がなければ月・木の夜は摂取カロリーと体重の報告会、火・金は夜中にエアロビをしていたの。」
「それじゃ、テーマソングは?」
「ぽ〜にょ、ぽにょ、ぽにょ、おなかでた~♪ねっ、ぴったりでしょ?」にっこりほほ笑むユキ。「これって、可愛い女の子とオジサンたちが歌うのよね。」

「いや〜、生活班長にはかなわん。かわいい顔して、けっこうきつくてのう。」と徳川が溜息をつく。
ユキに痛いところを容赦なくつつかれて、同期の太田や藪ならまだしも、年配の徳川や上官の艦長はさぞ居心地の悪い思いをしたことだろう。痛ましい…、なぜかそんな単語が脳裏に浮かび、さっさとこの場を去りたくなった真田・島以下一同であった。

「そうだったのか。いや、減量のためのエアロビなら、別に問題はありません。どうぞ続けてください。」
そそくさと退室しかけた島と真田の腕をユキががっしり掴んだ。
「第一艦橋勤務もほとんどが座り仕事なんだから、他人事だと思って油断してたら危ないわよ〜。一緒にやりましょ。」とにっこり。
「え〜〜〜〜っ、あの、その、俺は向こう1ヶ月間ずっと当直で…」
「俺も開発中の新兵器が…」
「エアロビは田舎の母に禁止されていて…」
いきなりのお誘いに大慌てで言い訳をするが、無邪気にすら見えるユキの微笑み、その威力の絶大さは誰もがよ〜〜〜く知っている。

果たして第一艦橋メンバーの運命はいかに…。


お見事です

>>> 長田亀吉   -- 08/09/27-00:12..No.[129]
 
    旬のネタを取り入れた小説、ヤマトクルーの個性のにじみ出る文章、お見事です^^。
 
楽しい新作をありがとうございます^^!

>>> Jay   -- 08/09/29-01:14..No.[130]
 
    文中のエアロビ光景を妄想して、危うくキーボードにお茶を取り落としそうになりました。
島君や技師長は日頃自己管理できていそうなタイプに見えますが、美しいプロポーションを末永く保つためには、男女の別なく厳しい自覚と涙ぐましい努力が必要ですよね。
雪ちゃんのような心強い監視者が近くで容赦なく見張っていてくだされば、ファンとしてはとても安心です!!
 


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