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>>>Alice
-- 05/03/02-00:09..No.[114] |
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「失礼いたします。聖総統。」 「どうした?」 「技術部情報将校のアルフォン少尉がお目通りを願い出ております。」 「よかろう、通せ。」 サーダに案内されたアルフォンが聖総統の前に進み出る。 「聖総統。地球侵略計画に関して、興味深い発見がありましたので、ご報告に参りました。」 「うむ。」 「現在、我が帝国は地球侵略の第一次攻撃として、ハイペロン爆弾を打ち込む準備をしております。」 「いかにも。」 「しかし、ハイペロン爆弾はそもそもひじょうにコストが高く、質量も大きいため遥々地球まで送る燃料費も馬鹿になりません。しかも、地球到着後は帝国本星の起爆装置との回路を常に確保せねばならず、そのための衛星設置など、維持管理費も嵩みます。」 「うむ……」 「帝国政府は、年間予算に占める軍事費の割合が高すぎると批判を浴びている折でもあり、私はコスト削減に貢献する方法はないものかと、地球についてリサーチを重ね、この度、ある面白い情報をつかみました。」 「ほう…」 スカルダートは、まだ年若いアルフォンを改めて見やった。頭髪こそ豊かだが、暗黒星団帝国のエリートにしてはどうも威圧感の足りない、ただの青二才にしか見えないが、こやつ、意外にデキルのかもしれない。 アルフォンは一旦言葉を切って、持参した資料をサーダに渡し、「お願いします」と礼儀正しく頭を下げた。そうそう、こういう礼儀って大事よね…と思いながら、サーダが、その資料を立体映像投影機にセットする。 3基の支柱から投影され、聖総統の前に浮かび上がったのは、林立する樹木の映像だった。まっすぐ伸びた針葉樹が並び立つ様は、楚々として気高さすら漂うが、なんとも平凡でのどかな光景だ。 地球の軍事力や科学力、またはあのヤマトに関する情報かと期待していた聖総統は、いささか拍子抜けしてしまった。その落胆をはっきりと顔に表してアルフォンを睨み、先を促す。 いつ見ても、なんて怖い顔なんだ…と内心びびりながら、アルフォンは気丈にも報告を続けた。 「我々がその肉体を欲している地球人という種族には、思わぬ弱点があったのです。」 「なに、弱点とな?」 地球人の弱点となれば、話は別。これは作戦の行方を左右する貴重な情報かもしれない。 「はい。これは季節的に現れる現象で、突き止めるのは至難の業でした。」 「して、その弱点とは?」 あからさまに興味を示す聖総統の反応に勢いを得たアルフォンは、エヘン!と言わんばかりの表情で言い放った。 「花粉症です。」 「花粉症?」 「はい。地球人は、毎年、木の芽時になると、この花粉症という、大変やっかいなアレルギー症状に苛まれます。その症状を引き起こす原因は、植物のオシベの葯内にある粉状の生殖細胞、つまり“花粉”です。」 投影機は、風に煽られて梢からもうもうと舞い上がる花粉の映像を映し出す。 「うっ!」 見ているだけでも、くしゃみが出そうな映像に、聖総統とサーダは思わず鼻を覆った。 「私の調査によりますと、花粉を吸い込んだ地球人は、目のかゆみ、鼻水、くしゃみなどの諸症状に悩まされ、この時期、ひじょうにイライラして怒りっぽくなるため、些細な事からトラブルが続発、友情にはひびが入り、恋愛は破綻、家庭は崩壊します。また一日中くしゃみばかりしているので、生産性が著しく低下し、ティッシュ製造業以外の企業活動が停滞、最悪の場合は停止します。」 「それは難儀なことだな」 「はい。そこで私は、この弱点を利用して、地球全体の国力を削ぐ方法を思いついたのです。」 空中の映像が、何百倍にも拡大された花粉に変わる。 「うっ!」 見ているだけでも、体が痒くなりそうな映像に、聖総統とサーダは思わず身震いした。 「幸い、我が技術部は、花粉成分の特定と再生に難なく成功いたしました。さらに花粉の威力を大幅にパワーアップさせ、わずかな量でも発症するよう改良しました。すでに新型花粉を大量に搭載した爆弾も完成しております。ご覧下さい。」 スカルダートの前に、何基もの爆弾が映し出された。 「1番大きいタイプがスギ花粉1号と2号、その隣がヒノキ・デラックス、ミニタイプがブタクサ・プラスαです。」 聖総統の赤い目がさらに赤く燃え上がる。 「アルフォン少尉、これは使えるぞ。」 「はい。」 「この爆弾を量産して地球に打ち込み、地球人を自ら争わせ、その生産性を極端に低下させれば、我々が手を下すまでもなく、種族は自然に衰退の道をたどる。そうすれば、割高なハイペロン爆弾を使わなくとも済むではないか。」 「それだけではございません。花粉爆弾を現在ではなく、200年前の地球に打ち込めば、我々の時代になる頃には、その国力と軍事力は停滞しきっているでしょう。そのような惑星を制圧するのは、赤子の手をひねるよりも簡単です。」 「なるほど。時間をはぐらかすのは、我々の最も得意とするところ。よし、アルフォン少尉、お前の作戦を採用しよう。早速準備に入れ。」 「はっ、かしこまりました。」 「成功すれば、中尉も夢ではないぞ。」 「ありがとうございます。」 かくして大量の強力花粉を搭載したスギ花粉1号、2号、ヒノキ・デラックス、そしてブタクサ・プラスαは、ほぼ200年前の地球に向けて発射された。しかし、この画期的な作戦が成功したか否かは、後にハイペロン爆弾が使われたこととアルフォンが少尉のままだったことを鑑みれば、推して知るべしである。 |
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暗黒星団帝国の陰謀だった >>> Alice -- 05/03/02-00:15..No.[115] | |||
今年は花粉の当たり年だとか…。 でも、地球人は科学の粋を尽くして、花粉症を克服するんですよね。(だからハイペロン爆弾が降ってくるわけだし) 食べると花粉症にならなくなるお米とか、花粉を吸着するスプレーだとか、花粉を出さない新種のスギとか、いろいろ開発されているようですが、一日も早く、人類をこの災厄から解放する方法が確立される事を、祈るばかりです。(今年に間に合うとすごく嬉しい) | |||
そうだったのかあ!! >>> MIYO -- 05/03/02-12:35..No.[116] | |||
Aliceさん、面白かったですぅ!! ありがとうございました♪ 私も花粉症なので、早く真田さんに対策してほしいと思ってます(笑) | |||