前作の時は,正直,テレビ版の14話以降と劇場版の全てに対して憤激した一人でした。
「この監督は,自分が広げた大風呂敷を綺麗に畳むこともできないのか!」と怒り狂った記憶です。
最初は意気込んで凄いモノを作ろう,と始めたけれど,結局,監督が人間的に未熟なので,困難なことに直面した結果,途中で無責任に投げ出した。
私にとってエヴァは,そういう印象の強い作品でした。
後日,さる筋から「エヴァの企画書」なるものを見せて頂いて,その結末とテレビや映画のあまりの違いにも愕然としました。
企画書どおり最後までちゃんと作れば,凄い名作になったのに…と思ったものです。
庵野監督は,その後,漫画家の安野モヨコさんと結婚したわけですが,そのモヨコさんの描いた「監督不行届」を読むと,真面目で責任感の強い奥さんの影響で,監督が変わりつつあるなあ,という感じを受けます。
(「美人画報」「働きマン」等の作品を見ても,奥さんは本当に責任感の強い人のように思えます。)
今回の映画化には,投げ出してしまった仕事をきちんと終わらせたい…という動機がどこかにあるのではないか,と,映画を見ていてふと思いました。
映画と直接関係ないことが長くなりましたが,皆さんがおっしゃるように,映像が本当に綺麗です。
兵装ビルや戦闘車両のギミック,使徒(特に,ヤシマ作戦の第6使徒)が,CGの力で奇跡のように美しく動きます。
キャラ作画も,テレビで(惜しいなあ…このキメシーンで綾波の顔がイマイチなんて)と思っていた箇所が,心憎いばかりの美しい画像になっています。
緻密で動きの速い美麗画像は,大画面で見ないと勿体ないです。
これだけでも映画館に行く価値アリアリなのですが,実は見ていていちばん嬉しかったのは,心理描写が補完されていたことでした。
ウジウジした煮え切らない性格のシンジくんですが,今回はモノローグや演出の変更で,比較的共感しやすいキャラに変更されています。
「ほめてほしいから怖いのをがまんしてがんばってるのに,だれもほめてくれない…」という趣旨のことをつぶやいて乗車拒否(?)するあたり,胸に響く方も多いのではないでしょうか。
今後,いろいろと新しい展開があるようですが,とにかく,監督が社会人として「更生」し,最後まで立派にストーリーを完結させてほしいと望んでおります。
(予告編では気になるセリフもありましたが,できれば「ひきこもって挫折する少年」ではなく,「少年の人間的成長」を描く物語であってほしい,と思います。)