最初に申しますが、いい評価ではありません。御承知の上でどうぞ。
DVDで鑑賞しました。上映時間が1時間未満ということで、最初から不安を感じてはいたのですが…
酷評を承知で言うと「何を見せたいのか」がよく分からない作品です。本作の主題は、再び地球を制圧した勢力の強大さ、冷酷さなのか、鉄郎がひとときを過ごした惑星の少女の儚い恋心なのか、それとも誇りに殉じるメタノイドの騎士のかっこよさなのか。
どのモチーフもごく中途半端で、印象に残る前にそそくさと切り上げられてしまっており、予告編映像としてならともかく、一本の映画作品とは認められないほど内容がありません。脇役のクレアさん(復活)や新登場のカノンら脇役は言うに及ばず、自分の足で動いてこそ、の個性である鉄郎さえもほとんど動いていないのだから、お話にならないのです。
全体的に絵はきれいで、CGで描かれた999、それに蛍の淡い光が舞う光景は美しいし、999の危機に颯爽と現れるアルカディア号はかっこいい(但し、物語構成上は…)けれど、それらを含めても映画としては物足りないと言わざるを得ないでしょう。いろいろな意味で、あまりにももったいない作品です。
壮大な世界観は、ナレーションで謳うだけでは十分でなく、観客の生理に訴える形で、地道に築き上げられねばならないー 最近の松本零士作品は、そのことを忘れているのではないでしょうか。