2.とある港

漁業の港。高倉健主演の映画の舞台になりそうなところ。

明確ではないが、日本のようにみえる。

小さな船がせめぎあうように停泊している。

船の舷側には日本語の船名がある。

中年の女性の声「そうか、そうするのかい・・・・お前がそうしたいと言うならそうすりゃいい」

3.港の岸壁

網の手入れをしている中年の女性が居る。

その傍らに立っている山南。

山南「ありがとう、母さん」

その中年の女性は、山南の母だったらしい。

山南の母「父さんには云ったのかい?」

山南「いいや・・・どうせ云ってもケンカになるだけだ。黙っていくよ」

山南の母、黙って網の手入れをしている。

山南「母さん・・・」

山南の母、網から目を離して山南を見る。

山南の母「父さんには私から言っておく。安心をし」

山南「母さん・・・」

山南の母「ただひとつだけ云っておくよ。父さんは、何も考えずに漁師になったわけじゃない。昨日の晩の敬介の口の訊き方には私も腹が立ったよ」

山南「(むっとして)じゃあ、何を考えたって云うんだよ」

山南の母、再び、網に目を戻して、作業にかかっている。

山南、苦笑する。

大きめのバッグをひょいとかつぐ。

旅立つ。

4.電車の車内

車窓を見つめている山南。

夕焼けが眩しい。

窓際から、故郷の漁港が見える。

岸壁が見える。

5.岸壁

山南の父が、こちらをじっと見つめている。

6.電車の車内

山南、窓に貼りついて、父を見る。

声にならない。